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Our Lovely Partner

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Catherine André

愛に満ちた素敵なパートナー

フランスの中南部、アヴェロン県に暮らす、
ジャガード織のデザイナー、カトリーヌ・アンドレの創作の世界です。
彼女のナチュラルで、愛に満ちた豊かな感性が、
美しいニットとなって、沖縄に住む私たちを魅了します。

Catherine André カトリーヌ・アンドレ

緻密なデザイン力と作業が要されるニットの専門分野で、色彩の魔術師とも呼ばれる存在。毎年のコレクションは、芸術作品に値するほどの独自性に富み、世界中の人々を魅了する。2013年フランスの国家勲章レジオンドヌールを受章

私にとってニットは日記です。ニットは文字を書くのと同じです。
私たちが着る洋服は、物語を語っているのです。

ニットを始めたきっかけ

子どものころ、おばあちゃんからニットを習いました。同じ動作を繰り返すだけの編む作業は、とても退屈なことだと思っていたので、長い間、ニットには手を出さないようにしていました。

十代後半になって、親友と一緒にアイルランドを旅する機会がありました。アイルランドの各地を巡って、各コミュニティーには、独特なニットのスタイルがあることを知り、感動しました。

専門学校を卒業した後、中学生にフランス語を教えるため、1年間スコットランドに滞在しました。ある時、ハリスツイード(Harris Tweed)発祥の地、ヘブリディーズ諸島で、かの有名な工場を見学する機会に恵まれました。まだ若い私には、高級なハリスツイードを買うお金などなく、街のツイード屋さんのディスプレイを眺めることしかできません。すると、お店の老人が話しかけてくれました。

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ツイード屋さんの話

「私たちヘブリディーズ島民は、自然の色や模様をツイード生地にするのだよ。この紫色の生地を見てごらん。こんな変わった色はヘブリディーズの山や海にないでしょう。でもね、陽が沈み始めるとあの丘のあたりの空が紫色に染まるのだよ。ほら見てごらん」

「スコットランドの漁師は、昔から妻が編んだセーターを着て海へ出る習慣があります。模様には一つひとつ意味があり、それを並べ、妻は世界に一つしかないセーターを夫のために編むのです。愛の表現でもありますが、万が一、夫が遭難して身元を確認ができない時に、その模様で見極めるのです」。

昔、とてもきれいなお姫さまが住んでいました。彼女は結婚を嫌がり、王さまを困らせていました。ついにお姫さまは三つの宝物、「空のように青いドレス」、「月のような輝きを持つドレス」、「太陽のように眩いドレス」を持ってこない限
り、結婚はしないといいました。

私は子どものころから、この「太陽のようにまぶしいドレス」がどんなものなのか不思議に思っていました。ヘブリディーズ諸島でツイード屋さんから話を聞いて、私は子どものころに聞いたおとぎ話を思い出しました。⦆そして「太陽のようにまぶしい」ものが何なのかを、初めて悟りました。
私たちが着る洋服は、物語を語っているのです。旅をしたり、さまざまな人々の話を聞いたりしているうちに、ニットはまるで、日記を書くように日々のルーティンになりました。

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ニットを職業として始めたころ

南フランスのボヘミアンな街のマーケットで店を始めました。私はニットの依頼があると、その人の好きな色や趣味などを聞きます。その人について少し知ることで、想像が膨らむのです。それに伴う二つのおもしろい話を伝えます。

恥ずかしがりやの若い男性の話

ある日、若い男性が私にニットを依頼してきました。彼は静かでシャイな人でしたが、私はいつも通り、その人の好みを聞いていると、どんどん話が長引いて、彼は私に人生のすべてを語る勢いで話してきました。十分な材料を基に、カラフルなセーターを編みました。

届けて数カ月後、彼にばったり会ったので、セーターを気に入ったかどうかを聞くと、彼は恥ずかしそうに答えました。「もちろん好きです。カラフル過ぎるのかもしれませんが、このセーターを着ていると周りから、それいいね。どこで買ったの?とたくさん声をかけられて、ちょっと困るぐらい人気者になってしまいました」

幸せな老夫婦

ある日、60代の老夫婦が二ットを依頼してきました。デンマーク人の旦那様は陽気な方で、アメリカ人の奥様は上品で寡黙な印象でした。奥様のためにニットを依頼され、私は1カ月かけて完成させました。彼らの住宅に届けに行くと、奥様が黙って受け取り、気に入ってくれたのかどうか、わかりませんでした。

数カ月後、旦那様が私の店に来ていいました。「奥さんはね、表では見せないけど、すごくあのニットを気に入っているんだ。この間は寝室の鏡の前で、ニットを着て一人うれしそうに踊っていたよ。私はドアの隙間から見たんだ」。

私たちが着る洋服には一つひとつ物語がありますが、たまに、着る人がその物語に「入り込む」不思議な現象があるのかもしれません。

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身の回りにあふれる、インスピレーション

日常生活のあらゆる所に創作のヒントがあります。最近読んだ本や印象に残った言葉、映画やアート、旅先の街並みや自然の雰囲気、友人との会話…。インスピレーションの源は身の回りにあふれています。

ある日、友達にいわれました。「歴史上の人物で活躍した女性をテーマにしてみたら?自己のDNAが反映されるような人物を採り上げたらどうかしら?」
DNA(フランス語ではADN)という言葉がとても印象に残り、歴史上で功績を残した女性を探してみたところ、探検家で思想家のAlexandraDavid-Néelに辿り着きました。偶然にも頭文字がADNだったので、ご縁を感じてそのシーズンのテーマにしました。

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先人の知恵を感じる
17世紀に建てられたフランスの家

石の家

家を探していた時の話。湿気が強い地域なので、床も壁も石でできた古い家は、夏はジメジメするのではないかと心配していましたが、地下には倉庫があり、夏は湿気の通り道となるよう、排水溝までが石で造られていました。昔の人の知恵にひかれて、この家に住むことを決めました。17世紀に建てられた家なので、いたる所で歴史を感じられます。

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貴族の家紋

家を購入したころは、玄関の壁に王家の紋章と、貴族の家紋が飾られていました。かつてこの家の主だった貴族のものだったのでしょう。しかし、私たちが引っ越す前日に、オーナーが家紋をペンキで塗りつぶしてしまいました(この家の主ではなくなったので、家紋を飾ることはできないと判断したのでしょう)。

私はとってもがっかりしました。ひと時の主だとしても、私たちはある意味、歴史からこの家を借りているのですから、家の歴史は残しておくべきです。その後、王家の紋章はそのままにしてもらい、できるだけ家紋も修復しました。

戦争避難者の言葉

家にはワインセラーがあり、木製の棚やバレルがそのまま残っています。木製の窓のフレームには文字が刻まれており、戦時中にこの家に逃げ込んだ人々が、何週間も引きこもっていたころのものだと思います。

自分や家族の名前、「死にたくない。生き残りたい」といったメッセージが記されています。私たちにとっては、この「残された声」も大切な歴史なのです。

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「小さいものは大きく、小さいものは美しい」

南の島に憧れて

子どものころ、叔父が海軍に所属しタヒチに駐在していました。帰省する時はいつもポリネシアのお土産を持ってきてくれて、異国の衣装や工芸品を見ていると、ポリネシアがどんな場所なのか気になって仕方がありませんでした。そのころから私は、南の島に憧れるようになったのです。

島は特殊な空間です。小さくて、大陸から切り離されていて、とてもユニーク。周りから影響されながらも常に独特な性質を保ち、どの島も独立していて、時代や価値観の変化に対してレジリエンスがるのです。まるで沖縄のようですね。

「私はアイボリー、ヨシノはエボニー」。互いを愛称でそう呼び合い、仕事を楽しみ、友として語ります。最初の出会いは1998年。2007年から毎年嬉々としてロージャースを訪れます。人も気候もあたたかく、地球の中心に沖縄があるような、不思議な磁力を感じることがあります。

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